2021年3月13日土曜日

2020年に観た映画から10選 ④

 その手に触れるまで 

  (ベルギー/フランス 監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ          


ベルギーに住む13歳の少年アメッド。ひと月前までゲーム三昧だった彼が急速にイスラム原理主義の過激思想に染まり、心酔する導師の言葉に沿って凶行に及びます。少年院に入り更生プログラムを受け、人々が手を差し伸べても洗脳は解けない。ブリュッセルにはイスラム教徒が人口の5割~8割を占める地域があり、その中に紛れ込む過激派によるテロが各地で発生しています。年端もいかない子どもがジハード戦士になってしまう危険が日常のすぐとなりにある。


過剰な演出はなく静かに淡々と進む映画ですが、
むしろそれが絵空事ではない恐怖を感じさせます。ラストシーンをどう捉えるか、アメッドは救われた? そうであってほしいと願わずにはいられません。

 ラストムービー  (アメリカ 監督:デニス・ホッパー)

 『イージー・ライダー』に続くデニス・ホッパーの2作目で、製作は1971年ですが公開後すぐお蔵入りになったのだとか。大ヒットした前作とは様相が違い、作者の狂熱的エネルギーを未整理のまま解き放ったような際立った異色作です。登場人物の振る舞いがほぼ例外なく常軌を逸していて、そのシュールさに笑えます。

なかでも、ハリウッドから来た撮影隊に感化され、張りぼてのカメラで‟本物の映画“を撮り始めるペルーの村びとたち。異文化への侵食と強烈なしっぺ返し。ハリウッド映画へのオマージュと皮肉が混在する入れ子構造のメタ映画? いろいろと解釈はできますが、それよりも先に半端ない熱量に圧倒され、鑑賞後に不思議と元気が出たのは確かです。  -続ー  矢車菊 香)