2021年3月8日月曜日

2020年に観た映画から10選 ②

 

 レ・ミゼラブル』  (フランス。監督:ラジ・リ)

映画の舞台はパリ郊外のモンフェルメイユ。あのヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」の町です。
昨年「パリの恋人たち」(監督=ルイ・ガレル)という映画も観ましたが、いかにもおしゃれな、恋するパリそのものでした。
この映画が見せるのはフランスの別の側面です。移民と低所得者が多く住み、ギャングや怪しげな集団が幅を利かせる町で生き残るための争いが絶えず、警官は横暴。犯罪が多発し、町全体がフラストレーションに覆われ一触即発の状態にある。 
                         終盤、子どもたちが起こす反乱の衝撃。                    
この子たちの明日はどうなる?           モンフェルメイユで生まれ育ち今もそこに暮らすラジ・リ監督にとって、これがリアルなレ・ミゼラブルなのかもしれません。

 

テルアビブ・オン・ファイア』                      (ルクセンブルク/フランス/イスラエル/ベルギー。監督:サメフ・ゾアビ)

撮影所に通うため毎日イスラエル側の検問所を通らなければならないサラームは、パレスチナの人気テレビドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」のスタッフ。
行きがかり上、検問所の司令官に自分は脚本家だと言ってしまう。
妻がこのドラマの大ファンである司令官は脚本に口を出し始め、次々と無理難題を吹っ掛けるようになり

この映画はコメディなので笑い所満載です。同時にサラームにはパレスチナ新世代の空虚感や諦念のようなものを感じました。

最後はこんなオチがあったかと呆然。
パレスチナ×イスラエル問題をこういうコメディに仕立てる離れわざに驚きますが、ゾアビ監督は願わくはかくあれかしと、笑いの中に希望を込めたのでしょうか。(矢車菊 香)